COLUMN / 施設経営
老人ホーム稼働率「90%の壁」——空室が埋まらない施設の共通点
本記事は、損害保険会社で支払査定・リスク審査に従事した者の監修のもと作成しています。
「あと数室が、どうしても埋まらない」——多くの有料老人ホームで聞かれる悩みです。稼働率が80%台で頭打ちになり、90%の壁をなかなか越えられない。募集は出しているのに、なぜか満室に届かない。
結論から言えば、空室が埋まらない施設には「自ら間口を狭めている」という共通点があります。本記事は、施設長・経営者に向けて、なぜ90%が壁になるのかという構造を整理し、埋まらない施設に共通する3つのパターンと、壁を越えるための発想を、一次情報とともに解説します。
なぜ「90%」が壁になるのか?
有料老人ホームは、人件費・家賃・食材費などの固定費が大きいビジネスモデルです。入居者が何人であっても、職員配置や建物のコストはほぼ一定でかかります。そのため、採算ラインとなる稼働率が高くなりやすく、一般に90%前後が一つの目安とされます(推測を含む業界的な目安であり、実際の分岐点は各施設の料金・コスト構造で異なります)。
下の図は、固定費の大きい施設における稼働率と収支の関係を示した概念図です。少しの稼働率の差が、黒字と赤字を分けます。
概念図:固定費の大きい施設における稼働率と収支の関係のイメージ(実データではなく、構造を示すための模式図)。採算の重さは[1]の倒産動向とも整合。
東京商工リサーチによれば、2024年の老人福祉・介護事業の倒産は過去最多の172件、その原因の72.6%が「売上不振」でした[1]。稼働率が採算ラインに届かないことは、そのまま「売上不振」に直結します。
共通点①:入口で「断りすぎている」
空室が埋まらない施設で最も多いのが、受け入れの間口を自分で狭めているケースです。「保証人がいない」「生活保護」「認知症が進んでいる」——こうした事情を理由に、問い合わせの段階で見送ってしまう。一件ずつは慎重な判断でも、積み重なれば稼働率を確実に押し下げます。
単身高齢者は今後さらに増えます。「昔ながらの入居者像」だけを待っていると、母集団そのものが細っていく——これが、間口を狭める施設が直面する現実です。
共通点②:紹介会社に依存し、自力の間口が細い
集客を紹介会社に頼りきっている施設も、稼働の波に苦しみがちです。紹介会社経由は手数料が発生し、しかも紹介の量は施設側でコントロールできません。自力での問い合わせ導線(ホームページ・地域連携)が細いと、紹介が止まった瞬間に空室が生まれます。
共通点③:未収を恐れて受け入れを絞る「負のスパイラル」
③は①の背景にある、より根深い構造です。過去に未収で苦労した経験から受け入れを厳しくし、その結果、稼働率が下がって売上が細る——という悪循環です。
未収を恐れる
過去の苦い経験から、支払い不安のある入居を避ける。
受け入れを絞る
「保証人なし」などを入口で見送る。
稼働率が下がる
空室が埋まらず、90%の壁の手前で停滞。
売上が細る
採算が悪化し、さらに慎重になる。①へ戻る。
未収を避けようとする行動が、かえって「売上不振」を招く——このスパイラルに気づかないまま、募集広告や設備投資だけを増やしても、壁は越えられません。
90%の壁を越える発想:断らない × リスクは仕組みで外へ
壁を越える施設と越えられない施設の違いは、募集の巧拙よりも「受け入れ幅」と「リスクの逃がし方」にあります。
| 観点 | 埋まらない施設 | 埋まる施設 |
|---|---|---|
| 入口 | 保証人の有無で絞る | 支払いの構造で見る(与信) |
| 未収リスク | 施設が抱え込む前提 | 仕組みで施設外へ出す |
| 集客 | 紹介会社に依存 | 自力導線+地域連携も持つ |
| 結果 | 受け入れを絞り稼働が停滞 | 断らずに稼働を積み上げる |
受け入れ幅を広げる鍵は、根性論ではありません。未収が起きても施設の損失にならない状態を作れば、「保証人がいない」を理由に断る必要が減り、稼働率は自然と上がっていきます。
まとめ
90%の壁は、募集の努力不足だけで生まれるのではありません。多くは、未収を恐れて受け入れを絞る構造が、稼働率を天井で止めています。壁を越える近道は、間口を広げつつ、リスクを施設の外へ逃がすこと。私たちLAST SOLUTIONSは、入居者様の月額利用料の保証を通じて、施設様が“断らずに稼働を積み上げる”経営を選べる体制づくりをお手伝いしています。
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出典
- 東京商工リサーチ「2024年『老人福祉・介護事業』倒産・休廃業解散調査」
※「90%」は固定費の大きい施設で語られる採算の目安であり、実際の損益分岐稼働率は各施設の料金体系・コスト構造により異なります。本文の図は構造を示す概念図です。
