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COLUMN / 制度・法律

成年後見人がついても未収は防げない——後見制度の限界

執筆・監修

羽田 圭佑(株式会社LAST SOLUTIONS 代表取締役)
損害保険会社の損害サービス部門で事故対応と保険金の支払査定に従事したのち、保険代理店営業として引受時のリスク審査と契約設計に携わる。執筆者について

「成年後見人がついているから、利用料の支払いは安心」——入居審査の場面で、そう考える施設は少なくありません。しかし、この安心は誤解を含んでいます。後見人がついていても、利用料の未収が起きるときは起きるからです。

結論から言えば、成年後見は「本人の財産を本人のために管理する」制度であって、「施設への支払いを保証する」制度ではありません。両者はまったく別物です。本記事は、施設運営者に向けて、後見制度の役割と限界、なぜ後見人がついても未収を防げないのか、そして「成年後見」と「保証」の違いを、民法などの一次情報にもとづいて整理します。

① 成年後見制度とは何か

成年後見制度は、認知症などで判断能力が十分でない人に代わって、財産管理や契約などの法律行為を支えるための民法上の制度です[1]。判断能力の程度に応じて、3つの類型があります。

表:法定後見の3類型(判断能力の程度による)
類型対象となる判断能力の状態
後見判断能力が欠けているのが通常の状態
保佐判断能力が著しく不十分
補助判断能力が不十分

制度の利用は広がっており、成年後見制度の利用者数は全国で約25万人規模とされています(最高裁の集計・近年)[2]。単身高齢者や認知症の増加を背景に、施設の現場で後見人と関わる機会は今後も増えていきます。

② 後見人の役割と、その限界

成年後見人は、本人の財産を管理し、本人の生活・療養看護に配慮しながら、必要な契約や支払いを本人に代わって行います(身上配慮義務)[1]。施設の利用料も、後見人が本人の財産の中から支払うのが通常です。

ただし、ここに決定的な限界があります。後見人が支払えるのは、あくまで「本人の財産の範囲内」だけです。後見人が自分のお金で立て替えるわけでも、支払いを保証するわけでもありません。本人の財産や収入が尽きれば、後見人がいても支払いは止まります。後見人は「お金を生み出す人」ではなく、「本人のお金を適正に管理する人」なのです。

③ なぜ後見人がついても未収は防げないのか?

後見人がついていても未収が起きる理由は、大きく3つに整理できます。

1

財産が尽きれば払えない

後見人は本人の財産の範囲でしか支払えない。年金だけで足りなければ、そこで止まる。

2

保証人ではない

後見人は施設への支払いを保証する立場ではない。未収を肩代わりする義務はない。

3

本人の利益が最優先

後見人の職務は本人の利益を守ること。施設の債権回収の味方ではない。

注意

とくに③は見落とされがちです。後見人は本人の生活を守るため、限られた財産を医療・生活費とどう配分するかを判断します。施設の利用料が最優先で支払われるとは限りません。「後見人がいる=施設が必ず払ってもらえる」ではないのです。

④ 「成年後見」と「保証」は何が違うか

混同されやすい両者を、役割で並べると違いは明確です。

表:成年後見と、利用料の保証の違い
比較項目成年後見利用料の保証
目的本人の財産管理・身上保護施設の未収リスクの引き受け
誰のための制度か本人(判断能力の補完)施設(お金の担保)
財産が尽きたら支払いは止まる保証の範囲で施設をカバー
未収を防ぐか直接は防がないまさにこの点を担う

つまり、後見は「判断能力の穴」を埋める制度、保証は「お金の穴」を埋める仕組みです。埋めている穴が違うため、後見だけでは未収の穴は埋まりません。

⑤ 施設が本当に必要な備えは何か

ここまでを踏まえると、施設が受け入れ時に確認すべきは「後見人がいるか」だけではないと分かります。大切なのは、「判断能力の補完(後見など)」と「お金の担保(保証など)」を、別々に用意できているかです。

後見人がいることは、契約や手続きの面で確かに助けになります。しかしそれは、支払いが続くことの保証ではありません。判断能力の面は後見で、支払いの面は保証で——役割ごとに担い手を分けて設計することが、後見制度の限界を補い、施設の未収リスクを抑えます。この考え方は、身元保証と利用料の保証を分けて考えるのと同じ発想です(身元保証と利用料の保証の違いを参照)。

POINT

「後見人がいるから大丈夫」と考えて支払いの担保を用意しないと、本人の財産が尽きたときに未収が施設に残ります。後見の限界を理解し、お金の備えを別に持つことが、受け入れの安心につながります。

⑥ まとめ

成年後見は、本人の財産を本人のために管理する制度であり、施設への支払いを保証する制度ではありません。後見人は本人の財産の範囲でしか支払えず、財産が尽きれば未収は起こります。だからこそ、判断能力の補完と、お金の担保は分けて備えることが重要です。私たちLAST SOLUTIONSは、入居者様の月額利用料の保証を通じて、後見制度だけでは埋まらない「お金の穴」を引き受け、施設様が安心して受け入れられる体制づくりをお手伝いしています。

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出典

  1. 民法(成年後見・保佐・補助に関する規定、および成年後見人の身上配慮義務=民法第858条ほか)
  2. 最高裁判所事務総局「成年後見関係事件の概況」(利用者数・申立件数に関する集計)

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