COLUMN / 未収・保証・与信
入居を1件断ると、施設はいくら失うのか——「断らない」の損益分岐点
本記事は、損害保険会社で支払査定・リスク審査に従事した者の監修のもと作成しています。
「保証人がいないから、この入居は見送ろう」——リスクを避けるための、慎重で正しい判断に見えます。しかし、その判断には見えないコストが隠れています。断ったあとに空いたままの居室は、静かに、しかし確実に利益を失わせ続けるからです。
結論から言えば、1件を断る判断は「安全」とは限りません。空室が生む機会損失は、未収のリスクより大きくなることが多いからです。本記事は、施設長・経営者に向けて、空室1室の機会損失を試算し、未収リスクと並べて「断らない」の損益分岐点を考えます。
「断る」は、本当に安全な判断なのか?
入居を断れば、未収のリスクはゼロになります。しかし同時に、その居室から得られるはずだった収入もゼロになります。リスクを避けたつもりが、確実な損失を選んでいる——ここに逆説があります。
未収は「起きるかもしれない」不確実なリスクですが、空室による逸失利益は「確実に発生している」損失です。経営判断としては、この2つを同じ土俵に載せて比べる必要があります。片方(未収の不安)だけを見て断ると、もう片方(空室損失)を見落とします。
空室1室が生む「機会損失」を試算する
具体的な数字で見てみましょう。以下はあくまで試算例で、月額利用料を15万円と仮定した場合の逸失利益です(金額は施設・地域により異なります)。
試算例:月額利用料15万円と仮定した場合の逸失利益(当社による単純試算。実際の金額は各施設の料金体系・稼働状況により異なります)。
さらに見落とされがちなのが、空室を埋め直すための再募集コストです。紹介会社への手数料や広告費を含めれば、失うのは逸失利益だけではありません。「断る」判断のたびに、このコストが積み上がっていきます。
では、未収リスクはどれくらいなのか?
もちろん、未収そのものが軽い問題だと言いたいわけではありません。東京商工リサーチの調査では、2024年の老人福祉・介護事業の倒産は過去最多の172件、その原因の72.6%が「売上不振」でした[1]。収入が細ることは、施設の存続に直結します。
しかし重要なのは、「売上不振」の中身には、未収だけでなく“埋まらない空室”も含まれるという点です。未収を恐れて入居を絞れば絞るほど、稼働率は下がり、売上不振に近づく。未収を避ける行動が、かえって経営を苦しめる——この構造こそが本質です。
| 観点 | 入居を断る(空室) | 受け入れる(未収の可能性) |
|---|---|---|
| 損失の確実性 | 確実に発生する | 起きるとは限らない |
| 損失の見え方 | 「発生しなかった収入」で見えにくい | 督促として目に見える |
| 備えの有無 | 空室は自力で埋めるしかない | 保証の仕組みで施設外に出せる |
「断らない」の損益分岐点という考え方
ここで有効なのが、損益分岐点の発想です。「受け入れて未収が起きた場合の想定損失」と「断って空室が続いた場合の確実な損失」を並べ、どちらが大きいかで判断する。多くの場合、空室を長引かせる損失のほうが重く効いてきます。
大切なのは「未収を絶対に出さない」ことではなく、「未収が起きても施設の損失にならない状態」で受け入れ幅を広げることです。リスクを外へ出せるなら、断る理由は小さくなります。
だからこそ、「与信」で受け入れ幅を広げる
銀行が融資の可否を「人柄」ではなく支払いの構造で見るように、施設も入口で支払いの構造を確認する「与信」の発想を持つことで、必要以上に断らずに済みます。保証人の有無という一次元ではなく、支払いが続く見通しと、万一のときにリスクを施設外へ出す仕組み——この2つがそろえば、受け入れは怖くなくなります。
「断らない」は、優しさや理想論ではありません。空室損失を抑え、稼働率と収益を守る、合理的な経営戦略です。
まとめ
1件を断る判断は、未収リスクを避ける代わりに、確実な空室損失を選ぶことでもあります。2つのリスクを同じ土俵で比べれば、「受け入れて、リスクは仕組みで外へ出す」ほうが合理的な場面は少なくありません。私たちLAST SOLUTIONSは、入居者様の月額利用料の保証を通じて、未収を施設の損失から切り離し、施設様が“断らない”経営を選べる体制づくりをお手伝いしています。
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出典
- 東京商工リサーチ「2024年『老人福祉・介護事業』倒産・休廃業解散調査」
※本文中の金額(月額15万円等)は理解のための試算例であり、特定の成果や金額を保証するものではありません。実際の逸失利益・費用は各施設の料金体系・稼働状況により異なります。
