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COLUMN / ご家族の視点

認知症の親の預金が下ろせない——「口座凍結」という落とし穴

執筆・監修

羽田 圭佑(株式会社LAST SOLUTIONS 代表取締役)
損害保険会社の損害サービス部門で事故対応と保険金の支払査定に従事したのち、保険代理店営業として引受時のリスク審査と契約設計に携わる。執筆者について

「施設の利用料を、親の口座から払おうとしたら下ろせなくなっていた」——認知症が進んだ親を持つ家族が、ある日突然直面する問題です。親名義の預金なのに、家族が引き出せない。これが「口座凍結」という落とし穴です。

結論から言えば、認知症などで本人の判断能力が低下したと金融機関が把握すると、口座は事実上「凍結」され、施設利用料や医療費すら家族が引き出せなくなることがあります。本記事は、親の介護に向き合う子世代に向けて、なぜ口座凍結が起きるのか、何に困るのか、それでも引き出せる場合、そして元気なうちにできる備えを、一次情報にもとづいて整理します。

① 「口座凍結」とは何か、なぜ起きるのか

ここでいう口座凍結とは、亡くなったときの凍結とは別で、本人の認知判断能力が低下したことを金融機関が把握した際に、預金の引き出しや各種手続きが制限されることを指します。窓口で本人の意思確認ができない、家族が代わりに手続きしようとしても本人の意思が確認できない——そうした場面で起こります。

なぜこうなるのか。それは、金融機関が本人の財産を守るためです。判断能力が低下した人の口座から、本人の意思に基づかない出金が行われれば、財産を損なうおそれがあります。凍結は、いわば本人保護のための措置なのです。とはいえ、家族にとっては「親のお金で親の介護費を払いたいだけなのに動かせない」という、切実な困りごとになります。

約443→586万人
認知症の人の推計(2022年→2050年)[1]
親名義
でも家族が自由に引き出せるわけではない
突然
手続きの場面で顕在化することが多い

② 凍結されると、何に困るのか

最も深刻なのは、本人のために必要な支払いすら止まってしまうことです。施設の月額利用料、入院・医療費、日々の生活費——これらを親の預金でまかなっていた場合、凍結によって支払いが滞ります。

家族が立て替えられればよいですが、それにも限界があります。結果として、親のお金は十分にあるのに、施設利用料が未払いになるという、皮肉な事態も起こり得ます。お金がないのではなく、「あるのに動かせない」ために未収が生じるのです。これは家族にとっても施設にとっても、避けたい状況です。

③ それでも引き出せる場合がある

ただし、まったく手立てがないわけではありません。全国銀行協会は2021年、認知判断能力が低下した預金者への対応について考え方を示し、本人の利益に適うことが明らかな場合(医療費・介護費など)には、親族による払い戻しに応じ得るという方向性を打ち出しました[2]

POINT

これはあくまで各金融機関の判断・条件によるもので、必要書類や確認は金融機関ごとに異なります。「必ず引き出せる」ものではありませんが、介護・医療の実費については、事情を説明して相談する価値があります。まずは取引先の金融機関に確認してみてください。

④ 元気なうちにできる備え3つ

最も確実なのは、判断能力があるうちに備えておくことです。代表的な選択肢を整理します。

表:口座凍結に備える主な手段
手段概要特徴
任意後見・成年後見後見人が財産管理を行う制度公的で確実。ただし本人の財産の範囲で管理[3]
家族信託(民事信託)家族に財産管理を託す契約柔軟な設計が可能。専門家の関与が前提
代理人届・代理人カード金融機関に代理人を登録する仕組み手軽だが対応・範囲は金融機関ごとに異なる

いずれも、本人の判断能力があるうちに手続きしておく必要がある点が共通します。認知症が進んでからでは選べる手段が限られます。「まだ元気だから」と先送りにせず、早めに検討・相談しておくことが、いざというときの家族を守ります。

⑤ 施設・家族にとっての意味

この問題は、家族だけでなく施設にとっても他人事ではありません。入居者の口座凍結は、「支払い能力はあるのに支払われない」未収を生みます。施設から見れば、入居者本人の資産の有無にかかわらず、未収リスクが潜んでいるということです。

だからこそ、施設は入居時に「支払いがどう続く見通しか」を確認し、万一に備える仕組みを持っておくことが重要になります。これは、成年後見だけでは未収を防げない(後見制度の限界を参照)のと同じ構造です。家族が備え、施設も備える——両輪で初めて、「あるのに払えない」事態を避けられます。

⑥ まとめ

認知症による口座凍結は、「親のお金があるのに、親の介護費に使えない」という落とし穴です。医療・介護費については相談で引き出せる場合もありますが、最も確実なのは元気なうちの備え(後見・家族信託・代理人)です。そして施設側にとっては、これも未収リスクの一つ。私たちLAST SOLUTIONSは、入居者様の月額利用料の保証を通じて、「あるのに払えない」を含めた未収を施設の損失から切り離し、ご家族と施設の双方が安心できる受け入れをお手伝いしています。

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出典

  1. 認知症の将来推計に関する政府(厚生労働省関連)推計
  2. 全国銀行協会「金融取引の代理等に関する考え方」(2021年公表。認知判断能力が低下した預金者への対応に関する整理)
  3. 民法(成年後見・任意後見に関する規定)

※金融機関の対応や必要書類は各行により異なります。個別の手続きは、取引先の金融機関・専門家にご確認ください。

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