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COLUMN / 未収・保証・与信

1室の長期滞納が施設全体の採算をどう崩すか——居室単位の損益

執筆・監修

羽田 圭佑(株式会社LAST SOLUTIONS 代表取締役)
損害保険会社の損害サービス部門で事故対応と保険金の支払査定に従事したのち、保険代理店営業として引受時のリスク審査と契約設計に携わる。執筆者について

「たった1室の滞納だから、全体で見れば大したことはない」——そう考えたくなるのは自然です。しかし、施設の採算構造を分解すると、この直感が危ういことが見えてきます。1室の長期滞納は、「1室分の売上を失う」だけでは終わらないからです。

結論から言えば、施設は固定費が大きいビジネスであるため、1室の滞納が生む損失は、その部屋の利用料以上に全体の利益を削ります。本記事は、施設長・経営者に向けて、なぜ1室が全体に効くのかを固定費と貢献利益の構造から解き、居室単位の損益を試算で可視化します。

① なぜ「1室」が全体に効くのか?

ポイントは、施設のコストの大半が入居者数に関係なくかかる「固定費」だという点です。人件費、家賃、光熱の基本料金、設備の維持費——これらは、ある部屋が埋まっていようが滞納していようが、ほぼ一定でかかり続けます。

ここで重要になるのが「貢献利益」という考え方です。1室から得られる利用料のうち、その部屋に直接かかる変動費(食材費など)を差し引いた残りが、固定費の回収と利益に「貢献」します。滞納が起きると、この貢献利益がまるごと消える一方で、固定費は減りません。つまり、失われるのは売上だけでなく、固定費を支える力そのものなのです。

② 居室単位の損益を試算する

具体的な数字で見てみましょう。以下はあくまで試算例で、金額は施設・地域により異なります。

15万円/月
1室の月額利用料(仮定)
約12万円/月
その室が固定費回収・利益に貢献する額(貢献利益の目安・試算)
半年で
約72万円
6か月滞納した場合に失う貢献利益(試算例)

滞納が続いても、その部屋の人件費や家賃負担は消えません。つまり「入ってこない売上」と「出ていき続ける固定費」が同時に発生します。1室の月額15万円が、半年で約90万円の売上喪失となり、その多くが施設の利益から直接差し引かれていきます。

1か月 滞納
約15万円
3か月 滞納
約45万円
6か月 滞納
約90万円

試算例:月額利用料15万円と仮定した場合の売上喪失額(当社による単純試算。実際は各施設の料金・コスト構造で異なります)。

③ 長期滞納の“二重の損失”

長期滞納が厄介なのは、損失が二重に重なる点です。

表:長期滞納が生む二重の損失
損失の種類内容
①未収そのもの提供したサービスの対価が回収できない
②機会損失滞納者が居室を占有し続け、支払い能力のある新規入居者を受け入れられない

とくに②は見落とされがちです。滞納が続く部屋は、退去も簡単ではないため(滞納と退去の法的ラインを参照)、「埋まっているのに稼がない部屋」として長く固定化します。1室が塞がれる間、その部屋で得られたはずの利益も失われ続けます。

④ 損益分岐稼働率という壁

固定費が大きい施設では、黒字と赤字を分ける「損益分岐稼働率」が高くなりやすく、一般に90%前後が目安とされます(推測を含む業界的な目安で、実際は施設ごとに異なります)。この水準では、数室の滞納・空室が、施設全体を黒字から赤字へ転落させることがあります。

注意

「1室くらい」という感覚は、損益分岐点の近くでは通用しません。分岐点付近では、1〜2室の差が利益の有無を左右します。この厳しさは、2024年の介護事業倒産が過去最多の172件、その原因の72.6%が「売上不振」だった[1]という現実とも整合します。

⑤ だからこそ「1室を守る」設計へ

ここまでを踏まえると、採算を守る要は「1室の貢献利益を、滞納で失わない仕組み」を持つことだと分かります。督促で後から回収しようとしても、貢献利益が失われた時間は戻りません。大切なのは、滞納が起きても施設の損益から切り離せる構造を、あらかじめ用意しておくことです。

POINT

1室を守ることは、その部屋だけの問題ではありません。固定費を支える貢献利益を守ることは、施設全体の採算と、他の入居者へのサービス継続を守ることに直結します。未収を外部の仕組みへ逃がせれば、1室の滞納が全体を揺らすリスクを抑えられます。

⑥ まとめ

1室の長期滞納は、「1室分の損」では済みません。固定費構造の中で貢献利益が失われ、機会損失が重なり、損益分岐点付近では全体の黒字を赤字へ転落させ得ます。だからこそ、滞納を施設の損益から切り離す設計が要になります。私たちLAST SOLUTIONSは、入居者様の月額利用料の保証を通じて、一室分の未収を施設の損失から切り離し、施設様の採算を守る体制づくりをお手伝いしています。

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出典

  1. 東京商工リサーチ「2024年『老人福祉・介護事業』倒産・休廃業解散調査」

※本文中の金額(月額15万円・貢献利益12万円等)は理解のための試算例であり、特定の成果・金額を保証するものではありません。実際の損益は各施設の料金体系・コスト構造により異なります。

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