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COLUMN / 未収・滞納への備え(完全ガイド)

介護施設の未収金——原因・法的対応・予防策の完全ガイド【2026年版】

監修

本記事は、損害保険会社で支払査定・リスク審査に従事した者の監修のもと作成しています。

「半年に一人でも、払わない人は払わない」——住宅型有料老人ホームの現場で、最も多く聞いた言葉です。未収金は担当者の努力不足で起きるのではなく、入居者の高齢化・要介護度の上昇・家族の不在といった、避けがたい構造から生まれます。

このガイドは、未収金という課題を「①なぜ起きるのか ②いくら失うのか ③起きたときどう動くか ④どう起こさないか」の順で体系化した、施設運営者のための総まとめです。各テーマは個別記事に接続しています。まずはこの1本で全体像をつかんでください。

172
2024年の老人福祉・介護事業の倒産(過去最多)[1]
44.3%
2050年の単独世帯割合の推計(2020年は38.0%)[2]
586万人
2050年の認知症の人の推計(2022年は約443万人)[3]

① なぜ起きるのか(構造)

未収金の背景にあるのは、単身高齢者の急増です。国立社会保障・人口問題研究所の2024年推計では、単独世帯の割合は2020年の38.0%から2050年には44.3%へ上昇し、平均世帯人員は1.92人まで縮小します[2]。生涯未婚率は2020年時点で男性約28%・女性約18%。

38.0%44.3%
単独世帯割合(2020→2050推計)[2]
1.92
2050年の平均世帯人員の推計[2]
28/18%
2020年の生涯未婚率(男性/女性)[2]

連絡先として登録された家族が、いざ支払いの話になると実質的に機能しないケースも少なくありません。未収は「事故」ではなく、こうした社会構造から生まれる「必然」に近いものです。担当者を替えても、督促を強めても、構造そのものは変わりません。

② 経営へのダメージ(数字)

1室でも長期滞納が生じれば、居室単位の採算は簡単に崩れます。そして未収は、施設全体の存続に直結します。東京商工リサーチの調査によれば、2024年の老人福祉・介護事業の倒産は過去最多の172件(前年比40.9%増)、有料老人ホームも過去最多の18件に達し、その原因の72.6%が「売上不振」でした[1]

倒産の原因が
「売上不振」
72.6%
介護事業
倒産件数(2024)
過去最多 172件(前年比+40.9%)
有料老人ホーム
倒産件数(2024)
過去最多 18件

出典:東京商工リサーチ「2024年『老人福祉・介護事業』倒産・休廃業解散調査」[1]

未収は、単なる取りはぐれではなく、施設の存続に直結する経営課題です。「たかが一室」が、経営全体を揺らします。

③ 法的対応(できること・できないこと)

「払えないから即退去」は、法的には簡単ではありません。契約が利用権方式か賃貸借方式かによって退去をめぐる考え方が異なります。

表:施設が「できること」と「できないこと」
区分内容
できること督促・連絡 → 相当期間を定めた催告 → 契約に基づく解除の検討 → 裁判所を通じた手続き
できないこと鍵の交換・荷物の搬出・電気の停止などの自力救済(法律で禁止)。発生済みの未収の帳消し
注意

賃貸借に近い形では「信頼関係が破壊された」と言える事情が求められます[4]。また2020年の改正民法(第465条の2)により、個人が保証人となる根保証では極度額(上限額)の定めが必須です[5]。亡くなられた後の残置物も、施設が勝手に処分することはできません。個別対応は契約内容と専門家への相談が前提です。

④ 起こさせない(予防)

未収は「起きてから回収する」より「起きにくくする」ほうが、施設の負担ははるかに軽くなります。カギは、人物評価ではなく支払いの構造を入口で見る、与信の発想です。

1

入口の設計

「保証人がいるか」ではなく、支払いを支える仕組みがあるかを確認する。

2

在籍中のモニタリング

入居後の変化を見続ける。認知症の進行など、状況は変わり続ける前提に立つ。

POINT

認知症の人は2022年の約443万人から2050年には約586万人へ増えると推計されています[3]。入居後に本人が支払い手続きを行えなくなる事態も想定し、入口の設計と在籍中の見守り、この両輪で備えます。

⑤ 保証・保険・後見の違い

「保証」とひとくちに言っても、防げる範囲はそれぞれ異なります。役割を混同せず、必要な機能を組み合わせて設計することが大切です。

表:混同されやすい4つの仕組みの守備範囲
仕組み主に担う役割
身元保証連絡・入院時対応・引受など「お金以外」
利用料の保証月額利用料の未払いという「お金」
成年後見判断能力が低下した人の契約・財産管理を支える公的制度
家賃債務保証住宅の家賃債務が中心(介護の利用料とは範囲が異なる)

お金の不安を補うもの、連絡・引受を担うもの、判断能力を支える制度——役割ごとに担い手を分けて組み合わせるのが現実的です。

⑥ 外部環境(公的支援・制度改定・ガイドライン)

支払いが続かなくなった場合の公的支援への着地、2027年に控える制度改定の論点、そして厚生労働省が示す高齢者サポート事業に関するガイドライン。未収と受け入れをめぐる論点は、施設の外側の制度環境とも密接に関わります。制度の動きを押さえておくことが、判断のぶれない受け入れにつながります。

⑦ これからの経営(断らない体制)

受け入れの幅を広げることと、収益を守ることは、両立できます。「保証人がいない」「支払いが続くか不安」という理由で入居を見送るのではなく、その不安を仕組みで引き受ける。断らない体制は、きれいごとではなく、稼働率と収益に直結する経営戦略です。

結論

未収は「確率」の問題ではなく、「起きたとき、誰が負担するか」の問題です。構造・数字・法・予防の4点を押さえれば、施設は督促に追われる状態から抜け出せます。私たちLAST SOLUTIONSは、入居者様の月額利用料の保証を通じて、一室分の未収を施設の損失から切り離し、施設様が安心して受け入れられる体制づくりをお手伝いしています。

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出典

  1. 東京商工リサーチ「2024年『老人福祉・介護事業』倒産・休廃業解散調査」
  2. 国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(2024年推計)」ならびに生涯未婚率に関する統計
  3. 認知症の将来推計に関する政府(厚生労働省関連)推計
  4. 民法(賃貸借契約の解除に関する判例法理=信頼関係破壊の法理)
  5. 民法第465条の2(個人根保証契約の極度額)/2020年4月施行 改正民法

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