仕組み 料金の考え方 現場の声 よくあるご質問 当社の想い コラム お知らせ サービス資料 お問い合わせ

COLUMN / 市場データ・将来推計

身寄りのない高齢者はどこまで増えるのか——「引き受け手のいない入居」にどう備えるか

執筆・監修

羽田 圭佑(株式会社LAST SOLUTIONS 代表取締役)
損害保険会社の損害サービス部門で事故対応と保険金の支払査定に従事したのち、保険代理店営業として引受時のリスク審査と契約設計に携わる。執筆者について

「入居を希望されているが、保証人になれる家族がいない」「連絡がつく親族がひとりもいない」——こうした相談は、いまや珍しいものではなくなりました。単身の高齢者が増え続けるなか、施設は「引き受け手のいない入居」にどう向き合うかを、避けて通れなくなっています。

結論から言えば、身寄りのない高齢者は今後さらに増え、「家族が支える」ことを前提にした従来の入居審査は、そのままでは立ち行かなくなります。一方で、身寄りがないことだけを理由に受け入れを断ることには、制度上もリスクがあります。本記事は、身寄りのない高齢者の増加を数字で押さえ、施設が実際に困る局面、動き出した制度、そして受け入れをどう設計すべきかを、一次情報にもとづいて整理します。介護施設の受け入れ・未収対策を検討する運営者の方に向けた内容です。

① 数字で見る「身寄りのない高齢者」の増加

まず、前提となる人口動態を押さえます。国立社会保障・人口問題研究所の世帯数の将来推計によれば、65歳以上の「一人暮らし(単独世帯)」は今後も増え続け、2050年には1,000万世帯を超えると見込まれています[1]。高齢者のいる世帯のうち、単身で暮らす人の割合が年々高まっているのです。

さらに見逃せないのが、その「中身」の変化です。かつて高齢者の単身世帯は「配偶者と死別した人」が中心でしたが、近年は生涯未婚の人が高齢期を迎える割合が上昇しています[2]。配偶者も子もいない——つまり、いざというときに保証人や身元引受人になり得る近親者が、そもそも存在しない高齢者が増えているということです。これは「家族はいるが疎遠」という従来の問題とは、質的に異なる段階です。

1,000万世帯超
65歳以上の一人暮らし世帯の推計(2050年)[1]
未婚化
配偶者も子もいない単身高齢者の割合が上昇[2]
前提の崩壊
「家族が支える」を土台にした審査が通用しにくくなる

この流れは一時的なものではなく、数十年単位で続く構造変化です。施設側から見れば、「保証人のいる入居者」を前提に運営を組み立てること自体が、次第に非現実的になっていくことを意味します。

② 「身元保証」と「身寄り」は別問題

ここで、混同されやすい言葉を整理しておきます。「身寄りがない」とは、頼れる親族が実際にいないという事実の話です。一方「身元保証(身元引受)」は、施設が入居時に求める機能——支払いの担保、緊急時の連絡・対応、退去時の対応、万一の際の身柄の引き受けなど——を指します。

問題は、多くの施設でこの2つが「身寄り(親族)がいなければ、身元保証の機能も満たせない」とワンセットで扱われていることです。だから「身寄りがない=受け入れられない」という短絡が起こります。しかし本来、身元保証が担っていた機能は、親族以外の手段でも代替できるものが少なくありません。逆に、親族がいても機能しないこともあります(連絡先はあるのに機能しない問題を参照)。

POINT

「身寄りがあるか」と「身元保証の機能が満たされるか」は、本来は別の問いです。身元保証が求める機能を要素ごとに分解すれば、「親族の有無」だけで受け入れを判断する必要はなくなります。身元保証と利用料の保証の違いは、こちらの記事で詳しく整理しています。

③ 身寄りがないと、施設は何に困るのか

では、身寄りのない入居者を受け入れると、施設は具体的に何に困るのでしょうか。漠然と「不安」で終わらせず、局面を分解すると、施設が本当に備えるべき点が見えてきます。

表:身寄りがないことで施設が直面する3つの局面
局面何が起きるか本質的な論点
お金(支払い)利用料の引き落としが止まる、滞納が発生する誰が支払いを継続的に担うか。原資はあっても動かせないことも[3]
意思決定・連絡入院・手術・容態急変時に判断・連絡する人がいない医療同意や緊急連絡を誰に委ねるか
退去・死後退去手続き、居室の残置物、死後の事務が宙に浮く契約終了後の事務を誰が引き受けるか

重要なのは、この3つはそれぞれ別の備えで対応できるという点です。とりわけ施設経営に直結するのは、最初の「お金」の局面です。意思決定や死後事務は成年後見や身元保証サービス等で担い得ますが、それらは支払いそのものを保証してくれるわけではありません。後見人がついても未収は防げない、という論点はここに関わります(後見制度の限界を参照)。

具体的な場面を想像してみてください。身寄りのない入居者が体調を崩し、判断能力が低下する。年金は入ってくるものの、本人が窓口で意思確認できず口座が事実上動かせなくなり、施設への引き落としが止まる。連絡すべき親族はおらず、成年後見の申立てには時間がかかる——その間も居室は使われ、介護は続き、費用は日々発生します。つまり、身寄りのなさが未収に転化するのは「入居時」ではなく、入居から時間が経ち、本人の状況が変わったときです。入口の審査だけでは、この時間差のリスクを捉えきれません。だからこそ、局面ごとに、そして時間の経過を織り込んだ備えが要ります。

④ 制度は動いている——ただし「支払い」は別

近年、国も「身寄りのない高齢者」への対応を進めています。医療の分野では、身元保証人がいないことのみを理由に、医療機関が入院を拒むことは適切でないとする考え方が示されてきました[4]。介護・福祉の現場でも、身寄りのない人の意思決定支援や、身元保証等高齢者サポート事業の適正化に向けた議論・ガイドライン整備が進んでいます。

これは施設にとって、二重の意味を持ちます。ひとつは、「身寄りがないから」という理由だけで一律に断ることは、社会的にも制度的にも許容されにくくなっているという事実。もうひとつは——ここが肝心ですが——こうした制度の後押しは主に「入口を開く(受け入れを拒まない)」方向のものであり、入居後の利用料が確実に支払われることまでを保証してくれるわけではないということです。制度は扉を開けますが、その先の採算は施設が自ら守るしかありません。

また、身寄りのない高齢者の受け皿として広がってきた「身元保証等高齢者サポート事業」についても、料金の不透明さや預託金の管理をめぐるトラブルが指摘され、国はサービスの適正化・見える化に向けた対応を進めています。つまり、外部サービスに機能を委ねる場合でも、施設としては「その事業者が何を、どこまで担保するのか」を契約内容で見極める目が欠かせません。とりわけ、身元保証サポート事業が引き受けるのは連絡・意思決定・死後事務が中心で、施設への利用料の支払いそのものまで保証する設計になっているとは限らない点は、混同しやすいので注意が必要です。ここでも「機能を分解して確認する」姿勢が効いてきます。

⑤ 施設ができる備え——受け入れの設計

ここまでを踏まえると、施設が取るべき方向は明確です。「身寄りの有無で受け入れを決める」のをやめ、身元保証が担っていた機能を要素に分解し、それぞれを個別の手段で埋めていく——いわば「受け入れの設計」に切り替えることです。

表:機能を分解して備える——受け入れ設計の考え方
埋めたい機能主な手段の例
意思決定・緊急対応成年後見・任意後見、身元保証等サポート事業、地域包括・行政との連携
退去・死後事務死後事務委任契約、後見人・サポート事業者との事前取り決め
利用料の支払い(採算の核)利用料の保証サービスで、支払いを施設の損失から切り離す

なかでも施設の採算を直接左右するのは、最後の「支払い」です。意思決定や死後事務が整っても、月々の利用料が止まれば経営は傷みます。逆に言えば、支払いさえ保証で担保できれば、身寄りがないという事実は「受け入れられない理由」ではなくなります。これは、空室を埋めながら未収リスクを抑えるという、施設にとって攻めと守りを両立させる設計でもあります(「断らない」の損益分岐点を参照)。増え続ける単身高齢者は、備えのある施設にとってはむしろ受け入れの機会になり得ます。

実務に落とすなら、手順はシンプルです。第一に、入居相談の段階で「身寄りの有無」を可否の判断軸にせず、先ほどの3機能(お金・意思決定・死後事務)がそれぞれどう埋まるかをチェックリスト化して確認する。第二に、埋まらない機能を、後見・サポート事業・死後事務委任・利用料保証といった手段で個別に補う。第三に、これらを契約書・重要事項説明に明記し、口約束で終わらせない(保証を契約に組み込む3つの方法を参照)。この設計ができていれば、担当者が代わっても、身寄りのない相談に対して「断る/受けるを個人の勘で決めない」運用が回ります。属人的な判断を、仕組みに置き換えるということです。

⑥ まとめ

身寄りのない高齢者は、単身世帯・未婚化の進行によって今後さらに増え、2050年には65歳以上の一人暮らしが1,000万世帯を超えると推計されています。「家族が支える」前提の審査は通用しにくくなる一方、身寄りがないことだけを理由に断ることは制度上も難しくなっています。鍵は、身元保証が担う機能を「お金・意思決定・死後事務」に分解し、それぞれを個別に備えること。とりわけ採算の核となる利用料の支払いは、保証で施設の損失から切り離せます。私たちLAST SOLUTIONSは、入居者様の月額利用料の保証を通じて、「引き受け手のいない入居」を、施設が安心して受け止められる形に変えるお手伝いをしています。

利用料の保証を、入居契約に組み込む方法をまとめました

エル保証がお引き受けするのは月額利用料の保証です。すでに発生している未収の回収を代行するサービスではありません。保証の範囲と上限・料金の考え方・入居契約への組み込み方は、サービス資料ページで全文を公開しています。

サービス資料を見る(全文公開) オンラインで相談する(30分)

出典

  1. 国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」。65歳以上の単独世帯の増加傾向にもとづく。具体的な世帯数・時点は同推計の公表値を参照。
  2. 同上、および国勢調査等にもとづく生涯未婚率(50歳時未婚割合)の上昇傾向。単身高齢者に占める未婚者の割合が高まっている点を示す。
  3. 認知判断能力の低下にともなう口座凍結については、当社コラム「口座凍結という落とし穴」、全国銀行協会「金融取引の代理等に関する考え方」(2021年)を参照。
  4. 厚生労働省「身元保証人等がいないことのみを理由に医療機関が入院等を拒むことのないよう」求める趣旨の通知(医政局通知等)。介護分野でも同様の考え方にもとづく議論・整備が進む。

※将来推計は前提条件により変動します。最新の数値・時点は各一次資料の公表値をご確認ください。個別の契約・法的判断は専門家にご相談ください。

← コラム一覧へ戻る