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COLUMN / 未収・保証・与信

お金の話になると電話に出ない家族——「連絡先はあるのに機能しない」問題

執筆・監修

羽田 圭佑(株式会社LAST SOLUTIONS 代表取締役)
損害保険会社の損害サービス部門で事故対応と保険金の支払査定に従事したのち、保険代理店営業として引受時のリスク審査と契約設計に携わる。執筆者について

「入居時にご家族の連絡先はいただいている。なのに、利用料の未払いの件で電話すると、なぜか出てくれない」——多くの施設で、相談員や事務担当が同じ壁にぶつかります。連絡先という“書類上の安心”はあるのに、いざお金の話になると、それが機能しない。

結論から言えば、これは家族が冷たいからではなく、構造から生まれる現象です。そして、督促を家族頼みにし続ける限り、未収は減りません。本記事は、施設長・相談員に向けて、なぜ家族が“お金の話”で機能しなくなるのか、緊急連絡先と支払いを担う人の違い、そして家族頼みの督促の限界を、一次情報とともに整理します。

「連絡はつくのに、お金の話だけ進まない」現場のあるある

体調の急変や入院の連絡には応じてくれる家族が、利用料の督促になると急に折り返しが来なくなる——これは決して珍しいことではありません。悪意というより、「自分が払うべきものなのか分からない」「払う余裕がない」という戸惑いが、沈黙という形で表れているケースが多いのです。

施設側は「連絡先があるのだから、話せば解決する」と考えがちですが、連絡がつくことと、支払いが進むことは、まったく別です。ここを分けて理解しないと、いつまでも“出ない電話”をかけ続けることになります。

なぜ家族は“お金の話”で機能しなくなるのか?

背景には、家族という前提そのものの変化があります。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、単独世帯は2020年の38.0%から2050年には44.3%へ上昇し、平均世帯人員は1.92人まで縮小します[1]。頼れる家族が「いない・遠い・余裕がない」状況が広がっています。

44.3%
2050年の単独世帯割合の推計(2020年は38.0%)[1]
1.92
2050年の平均世帯人員の推計[1]
28/18%
2020年の生涯未婚率(男性/女性)[1]

機能しなくなる家族は、おおむね次の3つに整理できます。

1

遠い・関係が薄い

遠方や疎遠で、日常的に関わっていない。「連絡先」でしかない。

2

経済的余裕がない

自分の生活で精一杯で、親の未払いまで負えない。

3

義務の誤解・回避

「自分が払う義務があるのか」が曖昧で、判断を避けてしまう。

「緊急連絡先」と「支払いを担う人」は別物

ここが最大の誤解ポイントです。入居時にサインした家族が「緊急連絡先」なのか「支払いの責任を負う人(保証人)」なのかは、契約上まったく意味が違います

表:緊急連絡先と、支払いを担う人の違い
比較項目緊急連絡先支払いを担う人(保証人)
主な役割急変・入院時などの連絡窓口利用料が未払いのときの支払い
支払い義務原則負わない保証契約の範囲で負う
施設が期待できること連絡が取れることお金の面での引き受け
注意

家族だからといって、当然に施設へ利用料を支払う義務があるとは限りません。民法上の扶養義務(民法877条ほか)は家族間の関係を定めるものであり、保証契約がなければ、家族が施設に直接支払う義務を負うわけではないのが一般的な理解です[2]。「連絡先=支払う人」という思い込みは、リスクの見落としにつながります。

家族頼みの督促が、限界を迎える理由

“出ない電話”をかけ続ける督促は、担当者の時間と精神を消耗させます。その労力は、本来のケアや運営に使えたはずの時間です。しかも、家族に支払い能力や義務がなければ、どれだけ連絡しても回収には至りません

未収の放置は経営に直結します。東京商工リサーチによれば、2024年の老人福祉・介護事業の倒産は過去最多の172件、その原因の72.6%が「売上不振」でした[3]。督促に人手を割きながら回収できない状態は、静かに経営を削ります。

だからこそ、支払いを“人”に依存しない設計へ

問題の本質は、支払いの担い手を「特定の家族」という一人の人間に賭けている点にあります。その人が機能しなければ、すべてが止まる。ならば、支払いの確保を“人”ではなく“仕組み”に置き換えればよい——これが発想の転換です。

POINT

入居の入口で「緊急連絡先」と「支払いの担保」を分けて設計し、後者を保証の仕組みで確保しておく。そうすれば、“お金の話で電話に出ない家族”に振り回されずに済み、督促に追われる時間もケアに戻せます。

まとめ

「連絡先はあるのに機能しない」のは、家族の問題である以上に、支払いを一人の家族に依存する設計の問題です。緊急連絡先と支払いの担保は分けて考え、後者は仕組みで確保する——それが、督促の消耗から施設を解放します。私たちLAST SOLUTIONSは、入居者様の月額利用料の保証を通じて、支払いを“人頼み”にしない受け入れ体制づくりをお手伝いしています。

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出典

  1. 国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(2024年推計)」ならびに生涯未婚率に関する統計
  2. 民法第877条ほか(扶養義務に関する規定)。施設利用料の支払い義務は、別途の保証契約の有無により異なる。
  3. 東京商工リサーチ「2024年『老人福祉・介護事業』倒産・休廃業解散調査」

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